ec_wp_cfoの余白_現場の正論と経営判断が衝突する時、CFOが不確実性を正しく観測するための構造的視点

現場の正論と経営判断が衝突する時、CFOが不確実性を正しく観測するための構造的視点

正論という名の重圧を解体する

CFOという役割は、常に二つの異なる言語の通訳者であることを求められます。現場が語る「情熱と正論」という言語、そして経営が語る「リソースの有限性と持続性」という言語です。この二つが激突したとき、多くの意思決定者は「どちらが正しいか」という二元論の罠に陥り、自らの判断を鈍らせてしまいます。

現場から上がる声は、多くの場合において「正しい」ものです。「この設備投資がなければ効率が落ちる」「この採用がなければ現場は崩壊する」といった主張は、その担当範囲においては紛れもない事実でしょう。この正論には強い引力が宿り、CFOの良心を揺さぶります。

しかし、この段階で重要なのは、その正論が「どのレイヤーの最適化を指しているか」を静かに眺めることです。部分最適の集合体が全体最適になるとは限らないという冷徹な事実を、感情を切り離して観測する必要があります。

心理的安全性の誤解と判断の停滞

組織運営において心理的安全性は重要ですが、CFOが「嫌われることを恐れて判断を保留する」ことは、真の意味での心理的安全性とは異なります。むしろ、基準が曖昧なまま情に流される判断こそが、組織に長期的な不確実性をもたらし、結果としてメンバーの不安を増大させます。

いま、あなたが感じている現場への申し訳なさや、判断への迷い。これらを排除すべきノイズとして扱うのではなく、一つの観測データとしてテーブルに乗せることが重要です。リソースの限度を前提に、いかに「いい点」を活かし、全体を最適化するかという「やりくり」の視点を持つためには、まず現状の不協和音をありのままに受け止める必要があります。

観測を構造化する状況認識チャート

判断を規律へ昇華させる前段階として、現在の状況を以下の書式に基づき可視化します。

⚫︎ 意思決定を阻害している正論の性質を分類していますか?  
・倫理性・正義に基づく主張(例:「人として正しい」):含まれる / 含まれない  
・実務上のボトルネック解消(例:「現場が回らない」):含まれる / 含まれない  
・感情的な不安・恐怖の表出(例:「見捨てられる不安」):含まれる / 含まれない

⚫︎ リソースの有限性を客観的に直視できていますか?
・キャッシュフローの許容限界:把握している / 曖昧である
・人的リソースの稼働余力:把握している / 曖昧である
・時間的猶予(デッドライン):明確である / 不明瞭である

⚫︎ あなた自身の揺れの正体を特定していますか?
・嫌われることへの恐怖:強い / 弱い
・誤った判断を下すことへの責任感:強い / 弱い
・現場との信頼関係の崩壊への懸念:強い / 弱い

⚫︎ 論理構造: 
上記すべてに回答を入れ、現在のノイズの所在を特定した場合 → 次のフェーズへ進む準備が整ったと定義する

不確実性を愛する知性

私たちは、不確実性を消し去ることはできません。できるのは、不確実性の輪郭を正しく捉え、その中で何が起きているのかを誰よりも深く知ることだけです。

現場の正論に耳を塞ぐのではなく、かといって飲み込まれるのでもない。その境界線に立ち、静かに状況を眺める時間は、決して停滞ではありません。それは、次に続く規律を定義するための、最も誠実な準備期間なのです。

次のステップへ

観測された不確実性を整理し、具体的な数値基準や条件分岐へと落とし込んでいく「判断に規律を宿す(Define)」の位置へ進みます。

決断の揺れは、あなたが組織の現実に誠実である証です。

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